今日も私の住む街はペンギン歩きに余念がない。
北国に住む人にとってこの季節はいつもペンギン歩き。
さもないとスベッって頭を打って死ぬかもしれない。
老いも若きもペンギン歩きはこの季節の最重要事項だ。
でもそろそろそんな歩き方にも疲れていた。ペンギン歩きなんてちっとも速く歩けないしちっともカッコよくない。緊張と寒さで肩も背中もゴリゴリだ。
最低気温-10℃の毎日にさよならしたい。
そんなことを思っている毎日だったが、私は東京へ行くことになっていた。
やった。ペンギン歩きよ少しの間さようなら。
北海道と東京はLCCも頻繁に飛ぶ様になって最早重い腰を上げて行く所ではなくなった。大都会の人混みは相変わらず嫌いだし、成田から都心に出るのも遠くて嫌い。でも行きやすくなった分私の行動範囲もとても広がったから感謝かな。
まだ寒い2月。
こんな時季にツアー後半戦を持って来るなんて、なんてシロップらしいんだろうと思いつつ成田に着く。北国より少しは暖かいのかな?と思っていたら「何これ?笑」と口を突いて出るほど関東の風は冷たくて。
でもペンギン歩きはしなくていい。やった。最高だ。
2月23日。大宮へは何度か行ったことがあるけれど、さいたま市は通り過ぎただけ。沿線にさいたまスーパーアリーナがあったっけな。
調べたら北与野駅で降りると近いらしいので、八王子から西国分寺で武蔵野線に、武蔵浦和で埼京線に乗り換えて北与野へ向かう。ここら辺がいわゆる武蔵野台地なのかなぁなんてエレカシのgood morningや武蔵野を思い出していた。
(調べたら武蔵野って多摩川と荒川で挟まれた所なんですね。さいたま市は違いました)
1時間余りで北与野駅に着く。
駅は小ぢんまりとしていて降車する人も少なく、駅北口を出てもごちゃごちゃ雑然としてもいず、すっきりしていて安心感が漂う風景に親近感を抱く。
アプリでヘブンズロックを検索すると道沿いに歩いて2分らしい。冷たい風の中デイリーヤマザキを目印に歩いていくとすぐに人が集まっているのが見えた。
ヘブンズロックさいたまVJ-3は2005年2月オープンだからちょうど13年目。その外観は看板が何とも・・・で(笑)、雰囲気的には余りライブハウスっぽくない印象。案内板だけがかろうじてらしさを演出していたかな。
5時から物販開始なので列の後ろに並んだら建物からかすかに音が聴こえてきた。おそらくリハ中だ。耳を欹てるとエビセンだった(今だから言えるね笑)
そうか、エビセンか。今日のセットリストはきっと今までと変えて来るなと思った一瞬。
キャパシティ350人なので物販の列もそう長くはなく、目当てのdelaidbackタオルとTシャツを購入。あたりはもう暗くなり始めている。オープンが6時15分。それまで時間があったので北与野駅近くのカフェで休憩。カフェにはシロップTを着た若者が二人、それぞれぼっちで座っていた。いいなぁ、このぼっち感。シロップぼっち参戦民最高!
さて、程なく時間になったので再び会場へむかう。ヘブンズロックまわりの写真を撮ったりしていると整列開始。今回ラッキーなことに整理番号が神番だったのですぐに入場できた。2階のロッカーに荷物を預けてフロアへ向かう。
因みにロッカーNOは16番。うしし。
フロアはホントにフラットで真四角っぽい感じ。最近のシロップのライブは押しが強いので余り前でも怖いからこのくらいかなぁなんて位置に立つ。
ちょうど真ん中あたりでステージ全てが良く見える位置。
ステージ上をよく見ると【HR】のロゴマークがバックに掲げてある。今日のドラムは?。。。ビスタライトだった。ビスタライトと青だいこだとドラムの音がちょっと違う気がするのでこの確認大事。
さほど前の方でもないかなぁと数えると前から5列目くらい?あれ?と後ろを振り返ると早くも後ろまで一杯で後ろの方が人が多い(驚)
あれ、かなり前だなぁ。具合悪くなったらどうしようなどといらぬ不安が過るけど、まぁいいか何とかなると思いなおして前を向く。
すぐ前にさほど年齢の違わない方々(笑)がいたので少し安心したよ♡
ライブ始まりまでの時間つぶしがぼっち参戦の苦しみなのだが、しなければならないメールの返事を書いたりツイッターでフォロワーさんにリプライしている間にあっという間に5分前。スマホよありがとう。すでに五十嵐のbadcatが点灯していて気持ちが高揚してくる。ローディー氏がベースとギターのチェックをする。入場後ずっと流れていたSEは前にツイッターで拾ったものだったのかな。
時計を見ていなかったのでアレだけど7時を5分以上過ぎたあたりで客電がおもむろに落ちる。最初に出て来たのが手を振る大樹ちゃん。そして次に出てきた五十嵐。出て来るといきなりステージ前に来て最前客の端から端までハイタッチならぬロータッチ!!ゴキゲンだねぇ、五十嵐。足取りもステップを踏むように軽やかに(笑)定位置に立つ。噂通りだ。それに目を奪われたせいかキタダさんがいつ入って来たのか観そびれる。
前に聞いていた通りキタダさんは髪も伸び、白いアゴ髭がまた素敵で表情もいつものポーカーフェイス。五十嵐は髪も伸び気味で個人的にはこれくらいが好きかな。大樹ちゃんは幾分前より痩せた様に見える。髪も少しカットしたかな。
安定の通常運転の3人の姿を見届ける。
うはー、埼玉十二夜始まる―。
ツアー後半は新譜delaidback曲初披露でもあるのでどんな風に曲が響いてくれるのか期待大だし、五十嵐の生存確認と(笑)、五十嵐の地元という事でどんな思い入れをぶち込んでくれるのかとの期待にドキドキしていた。
ではセットリストから。
2018.2.23 FRI HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
<セットリスト>
01.クロール
02.Star slave
03.冴えないコード
04.upside down
05.これで終わり
06.赤いカラス
07.前頭葉
08.sonic disorder
09.夢みたい
10.センチメンタル
11.開けられずじまいの心の窓から
12.翌日(1番のみ五十嵐弾語り)
13.落堕
14.変拍子
15.光なき窓
En-1
16.無効の日
17.キミのかほり
18.もういいって
19.Drown the light
20.真空
En-2
21.エビセン
22.生活
言ってしまうとこの日は五十嵐祭りだった。
1曲目クロール始まり。イントロが流れ出すとすぐにお客さんがずずっと押してくる。あの8ビートを刻むギターの音とドラムのダダダンに気持ちが一気にあがる。今日の五十嵐、声が出ている。リキッドの時は風邪のせいか声の調子が余りよくないとの事だったので心配していたけれど、今日は全く問題なさそうだ。
これから先は思いつくままに。
最初っから五十嵐の、ライブを楽しもうとする勢いやら地元感もあったのかもしれないけれど、ワクワク感満載の気持ちで一気に曲にノっていく。ギターソロのところでは歯を食いしばるいつもの五十嵐。ライブをする事自体が闘いなんだろうなと思う瞬間でもある。
Star slave後、早くも2曲目でタオルでゴシゴシ汗を拭く。歌っている時目を瞑る時間がとても長いこれまでの五十嵐だったけれど、今日はツアー前半よりも長くお客さんを見れていた様だ。
3曲目。今日は冴えないコードで来てくれた。この曲のイントロでキタダさんのスラップに釘づけ。シロップでスラップをやるキタダさんを見れていないのでこの時は凄くカッコ良くて感動しまくり。
これはハコのせいなのかどうかわからないけれど、スリーピースのそれぞれの音がとてもクリアに響いて来て音の輪郭もはっきりしていたので3人の奏でる音がちゃんと耳に飛び込んで来るのね。特にシロップはベースラインがとても大事だから凄く良かった。
赤いカラスは音源のあのリードギターを入れるにはPAさんのところで音を被せるしかなかったんだろうけどあのリードが赤いカラスの曲の世界観を決めていると思うので正直あの音が欲しかった。
でも、生音でないのを好む五十嵐ではないだろうし、あれはあれでリアルなんだよね。この曲が本当に好きで、歌詞が変わったところがライブではどう聴こえるかな~と思っていたのだけれど何の違和感もなくて良かった。それは曲終わりの
「ひとりだけの~」辺りから五十嵐がもう叫んでいたから。ずっと叫んでいてこの曲のリアルが胸に迫った。「ひとりだけの夢」「有限」全部全部本当だし五十嵐が最初から歌っていた事だ。
今回は最初の方での大樹ちゃんMCも短かったね。「ここはがっちゃんの地元だからやりたい曲があるみたいです」っていうのに大きな笑顔で「やっちゃうよ~~」とお客をツンツンしてたらしい。記憶にない(笑)。もうこれ自体レア過ぎだよね。
五十嵐が小学生の時に北与野に住んでたのね。これも後から知る。MCがあまり良く聞き取れなくて。
五十嵐は本当に滴り落ちるように汗をかいていた。半分は冷や汗だったのかもしれないし風邪によるものがあったのかもしれない。そして曲ごとにギターを替えていたね。出来ればどなたか詳しい方にこの曲の時にこのギターって表を作って欲しいです。
前頭葉。最初の「シー」を聴き逃した。シュン。そして全力の
「ぜーんとーうよーぅ!」「ぜーんとーうよーぅ!」。
ソニックのキタダさんベース始まりからのイントロのあのグルーヴ。イントロであれだけの音の塊をぶつけられるバンドってそういない。
で、温度が上がったところで「夢みたい」。
シロップの曲はハードなものとバラードものとの絶妙な落差がとても魅力だ。
キタダさんのベース音と五十嵐のギター音の不協和音ギリギリのところのバランスに唸る。そんな和音こそシロップの色でもあるね。そしてなんとここでサプライズの一つ目センチメンタルが!シロップはdelayed始まりの私なので一昨年の新木場サンセット以来、ワンマンでは初なのでここでこれかー!!delayedのトップ曲でもあるのでなおさらの事この曲の描く美しい宇宙に引き込まれる。泣きそうだゴメン。
「翌日」は名古屋からAnything for todayに代わって入った曲。弾き語りからバンドサウンドへ。この曲構成がたまらない。メロディーも歌詞もとても美しい曲。
BUMPでいうならガラスのブルースの位置にある曲。シロップ曲の中でも群を抜いてポップでシンプルで素直な曲。
「落堕」での大樹ちゃんのカモンの煽りにテンションMAX。お決まり中のお決まりなんだけど何度見ても燃える(笑)
そして2番の歌詞で五十嵐がギターを置いてハンドマイク!
で、「ねぶそくだっていってんの~~~~~ぉ!!!」でのシンガロングをキメる。
最高。
曲間に音を消してチューニングしたり、軽くリハ的な事をしたり何度かしゃがんだりしたのはエフェクターいじってたのかな。そんなところも印象的。ギタリストのチューニングの時の間とかエフェクターのスイッチを押すブチッブチッっていう音とかとても好き。この日五十嵐の自慢の左足あげが何度もあったらしいのだが全然目に入らなかった。何故???惜しい。。。
でもこれには理由がある。ツアー前半が終わって少し間があった間、音沙汰のないのは五十嵐だけなので、五十嵐の安否というか、元気なのか、病んでないのか(笑)とても気になっていたから私はこの日五十嵐の表情ばかりを追っていたからだ。正直それにとらわれて色々と記憶にとどめておく余裕など全くなかった。
本編は「変拍子」と「光なき窓」である意味とてもシロップらしい印象を残して終了。
アンコール待ち。お客さんの手拍子が弾んでいる。暫くしてでてきたメンバー。五十嵐が「まだ帰ってなかったんですね」と言って笑う。
お客さんも笑う。いや楽しい。幸せ。笑ってる五十嵐、笑ってる大樹ちゃん、いつも通りのキタダさん。そしてお客も笑う。凄いいいライブをぶちまけてくれてる。
これ以上嬉しい事ないよね。
で、やってくれたのがジモティ五十嵐からのプレゼントなのか、「キミのかほり」と「もういいって」。キミのかほりの五十嵐のファルセットともういいっての
「No more No more No more no no more!!」は最高でした。大樹ちゃんのコーラスも。ただこの日大樹ちゃんコーラスがいつもより小さく聴こえたのでそれは残念でした。
そしてドローン。前半にも曲がセットリストにあがっていたけれど今回は特に大樹ちゃんの見事なドラムソロからのベースとギターとのフェイク合戦のイントロ。
もうずっとやっていて欲しいくらいのグルーヴ。歌が絡まなくてこのクオリティ。
五十嵐は声の調子がいいとギターの方も調子がいいらしい。凄く弾けていた。
そして真空のイエイエイエー。アンコール辺りからお客さんのタガも外れて、アップテンポの曲のいたるところでシンガロングが起きていた。真空もオイオイコールが起きてなかった?
そしてWアンコールでレア曲エビセンと生活。生活も思い出せないやいやいーのところは周りの人歌ってたよね。ホントにレアなセットリスト。五十嵐の思い入れをしっかりと見届けた。そして十六夜ツアーの大樹ちゃんは、いつものひまわりのような笑顔の代りにドラマーとしての真剣さとシロップの音楽を大事に思う真摯さに溢れていた。
あれから4日が過ぎた。
今日も私は道を時々ペンギン歩きで歩いている。
相変わらず速く歩けないし、滑りそうでイライラする。
いつになったらキレイな道をペンギン歩きをせずに歩けるんだろう。
4日前のシロップは、キタダさんと大樹ちゃんのリズム隊ががっしり支える海の
上を自由に、ヘラヘラと笑いながら楽しそうに、だけど時々危なっかしく辛そうに、まるで氷の上をたどたどしく歩くペンギンの様に五十嵐はいた。
余りに楽しそうにしているのでお休み前の全力疾走じゃないのかと心配にもなる。
それと同時に五十嵐が楽しそうにしているのがちょっと先への希望の様にも映った。
人の心の奥底はわからないけれど、こんなに素晴らしいスリーピース、きっと自慢だと思う。こんなハイクオリティでかつ優しい曲たちを私は知らない。
聴こえたかな、お客さんの声。
シロップのライブを観たたくさんの人が思っているけれど、この3人は最高だ。描き出す世界は聴いている私たちの心の中の宇宙だ。物凄く私たちの心の体温に近い音楽だ。五十嵐は私で、私は五十嵐の中に私を見る。
オーラス新木場まであと3週間。
その頃には私もペンギン歩きの必要はなくなっているだろう。
前にも書いたが、五十嵐はずっと今まで青春の残像を背負い続けてきたように思う。
苦々しい、苦しい青春の欠片。このツアーが終わる事で背負ってきたこの残像を捨てる事が出来るんじゃないかな。
青春の残像を捨て去ったところからまた新たなsyrup16gが始まるといいなと思う。
reborn そして光のようなへ。今回光のようなはやっていない。
オーラスでやってくれるんじゃないかな。何となくそんな気がしている。