バンドが曲を作る形態には二通りあるらしく、メロディーが先にできて後から歌詞が付くタイプと、歌詞が先にできてそこにメロディーを充てて行くタイプと。
気をつけているのは、メロディーが先にできるバンドの曲については歌詞を余り深く聴きすぎないようにすること。そして歌詞が先にできるバンドの場合は伝えたいメッセージがあると捉え、歌詞もしっかり聴く事だ。
エレカシは先方に当たるバンドだと思うので歌詞を掘り下げるというよりもいい意味で楽曲の一部として聴くのがいいと思っている。
にしてもだ・・・
今回の新譜はあちらこちらで大絶賛の嵐だけれども、あれだけ待ちわびたにもかかわらず残念ながらアルバムとしての魅力は?と聞かれると、「あー、練り上げられたものではないですね」としか答える事が出来ない。
何度聴いてもストンと来ないので、本来ならこんな聴き方はしないのだがムジカの記事内容が良さげだったので、あんまり好きではない鹿野さんのインタビューだけど(笑)読む事にした。
読んで思ったのは、やはりアルバム制作に時間はかけられなかったんだなぁって事。昨年来の30thアニバーサリーイヤーで超多忙な日々を送っていたエレカシだったから新譜発売が6/6と知ってどこにアルバムを作る時間があるんだろうと不思議に思っていた。特にここ最近のシングル曲は載せて来る歌詞も単調で同じ事を歌っており、元来の宮本らしい歌詞表現が見られない事がそれを裏付けていた。
だって歌詞を深追いしなくても同じ言葉が繰り返し出て来るんだから。
それと・・・
バンドが売れる事はとてもいい事だと思う。
たくさんの人が聴いてくれる。
これはバンドマンだったらとても嬉しい事だと思う。
それはそれとして。
エレファントカシマシは、宮本は、充足したんだなと思う。
故郷に錦を飾る的な、この年代ならではのシンプルなてっぺん取る思考。
宮本が公言してはばからない通りの。
アニバーサリーイヤーで手にした自信と名声とたくさんの賞賛。
でも、それとは別に本人が気づかないうちに失ってしまった。
何かを。
売れて来るとメロディーがシンプルになるバンド。
それは何もエレカシに限った事ではない。
たくさんの人に届けようと思うあまり、音数が少なくなるメロディー。
満ち足りてポップになりすぎたメロディーはどこかで個性を失う。
そこを補う歌詞があればまだよい。本作は残念ながらそれもない。
「神様」「旅に出る」「歩き出す」そして空・海・山・星とかの自然が出まくる歌詞。
そしてエレカシらしい楽曲もどこか古臭い。何故なんだろう。
人気、名声という物によって満たされた気持ち。
でもそれは儚い砂の城だ。
それに気付いているならばもっと人の心に寄り添う曲が書ける筈だ。
最後の2曲は2013年頃の曲だというのも納得。
宮本が突発性難聴で休んでいた頃の曲だったわけか。
でも神様に祈りすぎ。
宮本は今でも師匠を求めているのかな。
これだけになって敢えて苦言を呈する人はいるのかな。
この年齢になって神様なんかいないのはわかってるよね。
神様なんかどこにもいない。
必要なのは運命と戦い続ける強い意志だ。
今の状況がいつまでも続かない怖さと戦っているのか。
だから祈るのか。
このアルバムはお金の匂いが付きすぎる。
30th関連で事務所に働かせられ過ぎた。
事務所が完全に悪いね。
リスナーを見縊ってはいけない。
解るんだよ、そんなのが。
アルバムって大事でしょ?
そのバンドの今を如実に表すんだよ?
魂全部注ぎ込んでアルバム作れてないのわかるんだよ。
その意味においてこのアルバムは前作を残念ながら
超える事はできなかったね。
1.Wake Up
エレカシが得意とするヘビメタ系の音作りである。
そしてダサカッコイイのがエレカシの持ち味でもある。
にしてもあのセリフはいらない。
エレカシの曲でセリフ入りのは色々あるけれど圧倒的にダサい。
初めて聴いた時もそれから数回も、ゴメン笑ってしまった。
このセリフがない方が圧倒的にいいのに。
2.Easy Go
楽曲形態としてパンクを選んだのなら伝えたいメッセージを込めてよ。
自分の事しか歌っていない時点でパンクではない。
やはりエレカシ曲。アウトロの音の重ね具合も含めてエレカシ曲。
抜群のインパクトと破壊力。
エレカシの真骨頂を見せるには余りある。
課題はライブで歌いこなせるかということか。
3.風と共に
4.夢を追う旅人
今となっては何とも古く感じてしまうのは何故だろう。
歌詞の「ひとくちの力」はやはり違和感。
5.神様俺を
新たな試みとしてのレゲエ曲。
にしてもまた神様に祈っている。
誓いを立てて祈っている。何故だろう。
にしても途中からこのレゲエも破綻してやはり宮本なりのエレカシ曲に
なってしまう。叫んでいる時点で破綻している(笑)
レゲエ曲と言っているけれど決してレゲエではない。
6.RESTART
ゴメン、これも古く聴こえる。
7.自由
満たされた者の飢えていな人の曲。
8.i am hungry
9.今を歌え
10.旅立ちの朝
楽曲として最も好きな曲。
ムジカで言うところの今までのエレカシとの惜別の歌か。
11.いつもの顔で
シティポップ的な曲作りはエレカシのこれからにはあり得ると思う。
こんな曲は年齢と共にいい味を出すから。
12.オレを生きる
全体的にはとても辛口のレビューとなってしまった。
それは宮本の心がモノで満足してしまった事・・・
聴く者のリアルじゃないって事・・・残念ながらこれは致命的だ。
それとアルバムを作るのに時間がなさ過ぎたこと。
これは事務所側の責任だ。
特に最近のパフォーマンスの低下もスケジュールの詰め込み過ぎが原因だと思う。
30th商法を展開しているFAITHは少し考えた方がいい。
歌詞の中に「俺の道」とか「風に吹かれて」という言葉が出て来る。
かつて宮本の中にあったものだから出て来ても当然とは思う。
でもこういった所に時間のなさが出てきたりするものだと思う。
ムジカのインタビューは特に最後の方で、宮本が今の自分とバンドとの乖離に
ついて触れている。前にもあった事だが今の宮本の曲作りの才能を引き出してくれるのはバンドメンバーではなくて村☆潤さんを始めとしたプロデューサーたちの様だ。
音源として作られたものをバンドで再現するためにこれからバンドと向かい合うのだろう。Zeppツアーでそれをどのように聴かせてくれるかを期待したい。