デビュー22年目を迎えるGRPEVINEの16枚目のフルアルバムが2/6にドロップアウトした。プロデューサーにホッピー神山氏を迎えてバインの新たな側面を導き出したこの会心作の感想。
1.開花
讃美歌の様な美しさ。教会音楽を聴いているような、フランダースの犬でネロが
ルーベンスの絵を見ている時のような。バインのイメージ、透明感、ピュア、耽美
的な繊細な美しさを表現して余りある。この曲にバインの美しさが凝縮している。
ひねくれていない素は案外これなのかもしれない。
2.Alight
イントロのホーンが昭和歌謡でも始まるのかと思わせて、主メロディはバイン。
このイントロならばエレカシ宮本の歌でも違和感はない感じ。この新たな試みが
1曲目とのギャップでとても際立つ。最後の方で「be Alight」でマイナーから転調
してメジャーコードに変化させるところの面白さ。
3.雪融け
1.2曲目が新たな試みの中、雪融けはいつものバインらしくてホッとしたり。
田中さんのボーカライゼーションの美しさとキーボードの神々しさとギタードラム
の圧倒的感。
4.ミチバシリ
イントロから聴こえるアジアンテイストの打楽器のような音。あれはシンセドラム
かな。この曲のジャンルレスはアレンジが見事。ミチバシリとは道を走る飛ばない
鳥のこと。
5.Asteroids
とは小惑星のこと。
ここから曲群がだんだんと下に潜り込むようにバインの持つ明るいとも暗いとも言
い難い独特の世界へ。宇宙を感じさせるシンセ。特に間奏の音の塊は凄い。この音
の壁がライブでもきっと凄い世界へ連れて行ってくれそう。
6.こぼれる
田中さんのギターのミュートやカッティングが良い。これはパーカッション。あと
バインはコーラスが素晴らしいのが何とも感動的である。そして1曲の中で起承転
結をみせる曲構成が面白い。
7.弁天
歌詞が意味深で簡単には理解できそうもない。田中さんらしい表現。社会的政治的
なものを独特な表現で提示するその手腕。音も何とも言い難いプログレッシブで
不穏な世界観。
8.God only knows
イントロからして目を見張る。いいえ、耳を見張る(笑)
レコードに針を落とした様な音。カンカンカンと打ち鳴らしてここですでに聴く者
をその世界へと引きずり込む。この音作りの巧みさ。妖艶で怪奇。シンセドラム
とハンドクラップを効果的に使ったバインお得意の世界観。この曲も社会風刺的
楽曲だけど決してダイレクトには指摘しない。インタビューでも田中さんが言って
いた通り。イエスでもノーでもない。さて、君はどう思う?
9.Era
この曲の歌詞が「風を待って」で始まるのは、風待ちのアンサーソングでもあるか
らのような気がする。01年にこの曲が出てから18年。
オーケストラの曲前の音出し音から始まり、一転してメロウなバインの歌ものらし
く優しくてしなやかに伸びる田中さんの声。
西川さんのスライドギターの音が気持ち
良い。7,8曲目からのこのギャップにまたやられるという曲構成。過去も未来も
抱き締めて悲しみも後悔も喜びも笑いも、全てを引き連れてただ、今を歩いてい
く。バインの今を歌った名曲。
繋がっていくメロディ苦い過去を引っ括めて何もかも連れて行こうもう一歩いつもの感じで
10.すべてのありふれた光
ドラムのメリハリの効いたビートが心地良い。メロディアスで気持ちのいいギター
の音。バインのこういった曲は朝のイメージ。
それは違う...........
ここから新たな世界を広げた。
世界は無常で無意味であったとしても、
ただ君がそこにいるだけで、希望は、ある。
今までより明るい光が、差す。
聴き終えて幸せな気持ちが心を満たす。
多分人生はこれからもそんなに悪くはない。
全10曲。
バインの多角的な側面をホッピーさんのプロデュースによってさらにその先まで
振らせたアルバム。今までよりも多くの冒険をしていると思う。その冒険が彼らの
新たな可能性を見せている気がする。年を重ねる事で見えてくる世界がある。
それは多分悪いものばかりではない。重ねる事で得るもの。それをこれから先も
期待したい。
(田中さんに小一時間ほど説教されそうな内容ですみません笑)