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Channel: ムーンロックの日記
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君が旅に出る理由 ―― syrup16g 冥途に寄せて

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2018.3.20 tue   at 新木場 studio coast

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<セットリスト>
01.変拍子
02.Find the answer
03.Vampire's store
04.生きているよりマシさ
05.来週のヒーロー
06.Sonic Disorder
07.タクシードライバーブラインドネス
08.パープルムカデ
09.I・N・M
10.正常
11.落堕
12.coup d'Etat
13.空をなくす
14.Drawn the light
15.翌日

En-1
16.無効の日
17.生活
18.神のカルマ
19.Share the light
20.天才
21.真空

En-2
22.リアル
23.reborn
 すみません、タイトルがくるりかオザケンじゃん?と突っ込まないで下さいね、そこのあなた(笑)
ちょっと今の気分にピッタリだったもので。

 3月も下旬だというのにまるで冬の様に寒い東京。3月20日、さくらもまだ1~2分
咲きくらいのこの日、「冥途」とサブタイトルを付けられたシロップCOPYツアーのオーラスはとにかくありえない形で素晴らしいものだった。

 それは多分他のバンドとは比べようもないものだと思う。
ライブパフォーマンスだけを見たら、ツアー後半戦では埼玉の方が圧倒的に良かったし、五十嵐も機嫌が良く、MCも滑らかにこなしていた。出て来るなり最前のお客さんとロータッチしていたくらい。

 オーラス新木場は敢えて言うと、それまで私が観て来た4本のどれとも違うライブだった。シロップが少しお休みするための、バンドもお客さんもその心の準備をする様でもあり、また、そんな意志など全くない様にも取れる不思議な2時間だった。

 セットリストは周知のとおり全くの別物で、最新AL delaidback~FREE THROWまでを年代ごとになぞっていくものだった。なぜそうしたのかは知る術もない。
これから出るかも知れない音楽雑誌にもしメンバーのインタビューが載るならもしかしたらその事も語られるのかも知れない。それに期待して今はライブを観て感じたそのままを書き記しておこうと思う。



 まるで生還の時の様にステージには紗幕がかかっていた。生還の時の1曲目、紗幕の中で始まったのはrebornで、わかるのは五十嵐だけでベーシストもドラマーも誰かは定かではなかった。でも紗幕に映る影で観ている人は何となく予想と期待をし、それが次曲ソニックで紗幕が開き、それが現実であることに胸が打ち震えた人も少なくないはず。

 それと同じ手法で「変拍子」から始まった本編は次曲「Find the answer」でその紗幕が開きバックに五十嵐の書いた「冥途」の文字が大きく浮かび上がる。
生還から始まったシロップの新たな物語はまた、生還と同じ手法で終わるのだと思った。

 ニコ生を観て感じるほどライブでの五十嵐はギターも声もそんなにガタガタには
感じなかった。それがライブでもあるね。

・・・というか・・・。
正直に言ってしまうと、4曲目「生きているよりマシさ」から9曲目「I・N・M」までの6曲での五十嵐の声の出なさ加減さえも10曲目「正常」からラスト「reborn」までのライブパフォーマンスの素晴らしさを敢えて誇張してしまうほどの ――
それくらいドラマティックなライブだったと言ってしまおう。

 埼玉をピークに青森→水戸とだんだん五十嵐がMCで余り話さなくなってきていたのは知っていた。青森では五十嵐の声も健在であり、ギターに少しの難はあったものの幾分の機嫌のよさも残っていた。しかし水戸では五十嵐の声の調子も良くなく、余りMCもなかったけれどもライブ自体は素晴らしいものだったとレポ等で読ませていただいた。

 3月20日、新木場のシロップは盤石かつ自由自在のリズム隊の、特にベースの音量が今までよりも大きめだったと思うし、大樹ちゃんのコーラスの美しさが五十嵐の声の不調をとても良くカバーしていた様に思う。
ソニックのこんなに長いイントロもそう聴けるものではないよね。五十嵐が叫んでヴォルテージが頂点に達した時、前方のお客さんが一気に前に押されて渦を巻くように揺れ、後ろに揺り戻されていた。ここ最近のシロップのライブではモッシュ状態も時々起る様になっていたけれどこの日のソニックのお客さんの渦を巻いて揺れる様は凄かった(この時に倒れた方々にケガがなくてホントに良かったです)。
実際、ここからずっとお客さんは熱かった。

 9曲目まではどちらかというとリズム隊が五十嵐をリードし続けていた印象。それが10曲目「正常」からは一気に変わっていく。この日の正常はライティングがlast dayを彷彿とさせ、ステージを白く照らしていく。そして五十嵐のギターのコードストロークにキタダさんのベースが、最初はゴリゴリな音から音にエフェクトをかけた美しいあの音が美しく絡まっていく。特にロッカバラードのリズムに乗ったベースの流れるようなアルペジオは本当に美しく曲に寄り添い五十嵐のギターに寄り添っていく。あの時あの場所は多分異次元の世界を作り上げていた。
これがシロップのアンサンブルの凄さだ。
多少歌がへたれても楽器のアンサンブルだけでとんでもないグルーヴを生み出す。私はこんな時にシロップのライブに無上の幸福感を覚える。
 
 そして次曲「落堕」。曲前の大樹ちゃんのドラムソロでお客さんから声がかかり
大樹ちゃんが「聞こえない!」と返す。ここからお客さんのタガが俄然とまた外れ始め、テンションが益々上がっていく。その大樹ちゃんのドラムソロにキタダさんが近寄ってシンバルを叩いてたのね、この時(その時は見えなかった)。そして耳に手をやって聴き耳を立てている。そこからおもむろにヘドバンしながらベースを絡ませていくキタダさんがカッコ良すぎて絶句。ツンデレキタダさんがこんなチャーミングな所を見せたら震える(笑)

 そうするともう五十嵐の副腎髄質からアドレナリンが放出されるんだろう。
もうさっきまでの声がウソのように声が出ちゃうの。
9曲目までの不調を取り返そうとするかのような凄まじいライブが繰り広げられる。

 だからシロップのライブは一時も目が離せない。そこそこで何か他所とは全く違った何かを落としていく。全く予想がつかない。たとえ固定セトリがあっても予定調和も余りありえない。それの極致が新木場だった。五十嵐のタガが外れると後はもう手が付けられない。

 アンコール、本当は天才で終わりだったんでしょう。なのにおねだりで真空をやろうとする五十嵐。大樹ちゃんは首をかしげる。
まぁもうこのキタダさん、大樹ちゃんという大人な2人の、形の違った愛情に支えられて五十嵐はこんなにも全開になってしまう。五十嵐が音楽でしか自分を解放できない。生きられないとはこういう事なんだろうね。この一瞬に全て捧げてというかね。

 大樹ちゃんのMCって魔法で、大樹ちゃんの一言でお客さんは自分の感情を余計に解放させる。そしてそのお客さんのエネルギーが五十嵐の火に油を注ぐから(笑)もう手が付けられなくなるんだね。

 新木場のトライアングルは最初いびつだった。ベースとドラムに引っ張られていた。しかし正常を契機に今までで一番大きな正三角形を作ってみせた。
本当にシロップは予想がつかない。ずっとアップビートで引っ張って来て最後にrebornで泣かせる。
 死にたくない。薬をくれだとか、君に存在価値はあるかとか生活はできそうそれはまだだとか言っておきながらすんばらしい美メロで

  
     昨日より今日が 素晴らしい日なんて  
     わかってる そんな事  当たり前の事さ


なんて歌っちゃって前半の不調はいったいどうしたの?って突っ込みたくもなる。



・・・
 
またいつか戻って来ます。また会いに来てください。 おやすみなさい。 


 これがたった一度だけの新木場での五十嵐のMCだ。冥途のTEEシャツを着ていたのは五十嵐だけ。五十嵐だけが冥途の旅に出る。
・・・と見せかけてのホントのおやすみだね、がっちゃん。おやすみなさいだもの。あの時間でおやすみなさいは子供の時間だもの。
16か所のライブで出し切って暫くは白い灰状態なのかもね。
やはり冥途への旅と詐称した五十嵐の冬眠だね。
五十嵐は冬眠の間で楽曲作成のネタをたくさん仕入れて、心と体のメンテもして
抜いた奥歯もちゃんとして、生まれ変わって戻って来る。
やはりそう思う。そのためには一度今までのシロップ曲を遡りながら光を当て、丁寧に労ってやらなければいけなかったのじゃないかな。

 やっぱりやっぱりrebornか。新木場で今までの曲たちひとつひとつを愛でて会場全体で共有した愛すべきシロップの曲たち。なぞってさすっても冥途の旅には連れて行かないんだろう。rebornを今歌うのはそういう意味だよね。reborn=生まれ変わって、delaidback=遅刻して戻って来るんでしょう?
その時また新たなシロップの物語が始まる。

ただ・・・
埼玉と青森では五十嵐の様子が変わっていた。青森は大樹ちゃんの地元だからそれがあるのでMCも少ないのかな?と思っていた。それがオーラス新木場、これから冥途に旅立つというライブでますます五十嵐は寡黙になり、笑顔も少なくなっていた。
歌いながら目を開けてお客さんを見る事も数えるほどしかなかった様子。
ステージの上り下りもそそくさとしていて余り客さんもメンバーも見ていない。
そこに何の理由があるのかはわからない。
もしかしたら青木さんの事があったのかもしれないね。
青森や水戸の時も。。。

 どちらにしても五十嵐は今の自分に満足なんてこれっぽっちもしていないだろう。願わくば戻って来た時に今よりもっと生きるのに苦労はしなくなっては欲しいけれどね。

 シロップが純粋に今の姿勢で音楽を表現し続ける限り、彼らの描き出す世界は誰も真似のできないものだと心から確信している。
 自らの内に鳴る音楽を純粋なままで正確に誠実に届けてくれた。
その五十嵐、大樹ちゃん、キタダさんの強い意志。
ありがとう、ありがとう。やんわり、ふんわり、待っています。

*相変わらずの乱筆乱文、全然まとまってない文章すみません。
 この文章は私の完全なる忘備録です。
 読んで下さった優しいあなた、ありがとうございます。

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