―― 叩きつけられた 至高の音の塊を前にして 私はただただ立ち尽くしていた ――
エレファントカシマシ Zepp tour ファイナルーー
ひと言で言ってしまうならこの言葉しかどうにも思いつかない ――
そんなライブだった。
2016.10.22 SAT 18:10~ Zepp Sapporo
【セットリスト】
01.俺の道
02.ズレてる方がいい
03.未来の生命体
04.TEKUMAKUMAYAKON
05.星の砂
06.悲しみの果て
07.なからん
08.Destiny
09.愛すべき今日
10.デーデ
11.Dj in my life
12.おかみさん
13.リッスントゥーザミュージック
14.世界伝統のマスター馬鹿
15.i am hungry
16.風に吹かれて
17.コール&レスポンス
18.RAINBOW
19.生命讃歌
第Ⅱ部
20.笑顔の未来へ
21.夢を追う旅人
22.月夜の散歩
23.俺たちの明日
24.ガストロンジャー
25.ファイティングマン
第Ⅲ部(アンコール)
26.大地のシンフォニー
27.やさしさ
28.今宵の月のように
29.so many people
30.四月の風
9月に日比谷野音2DAYSに参戦してから約1か月。
初野音のこの2日間は特にエピ期を中心にしたセトリでユニバ期崇拝者の私に
東京の空の下で、1日目は宮本の人間らしい感情の綻びを、2日目は鉄壁のバンドサウンドを計算された理性を上手く隠しながらエレファントカシマシの真骨頂を見せてくれた。
それから1ヶ月。10/1 Zepp Nambaからスタートしたツアーは10/22、Zepp Sapporoでファイナルを迎えた。どのバンドのツアーでもそうだが、ファイナルと聞けばやはり特別な何かを期待する。バンドはラストに持っているものを全て出し切ってくれるからだ。
10月に入ってからの北海道は一気に寒さが身を震わせる季節を迎え、ライブ前日にはうっすら雪が積もる様な天候。
おまけに天気予報が変わり、15時過ぎから雨の予報。
グッズ購入のため15時頃にZEPPについた時にはポツポツ雨が降り始めた。
開場まで待機している間に長袖のカーディガンを羽織っただけの私は寒さに震える。
16時半、整番順に並び始めた頃には結構な雨。それを何とか凌ぎ入場。前から2番目のバーの石くんの前辺りに陣取る。
入場して間もなくSEが流れ始める。
18時開演だが、押す事10分。Sapporoは1日だけなので1曲目が何で来るかでこの日のセトリの大方の予想はつく。
18時10分頃、メンバーが出て来る。総合司会宮本は黒いスキニ―パンツに白シャツイン、黒ジャケ。2番目のバーがここまでメンバー1人1人の表情まではっきり見えるのに私は内心ビックリ。実はZEPPでここまで前でライブを観るのは初めてなのだ。
1曲目は「俺の道」。エレカシを聴き始めたのがAL「俺の道」からの私にとってはこの男くさい和製ロックの代名詞のようなアルバムが大好きだ。
キーボードのないギターロックバンドの鳴らす第1部の曲たちはゴツゴツ骨太ロックで特に石くんのギターのカッコ良さが際立つ。そしてトミのドラムのビシバシ感が曲に確かな輪郭を与え、成ちゃんの安定のベースが音に厚みと深みを加えてしまうと今までキーボードに彩られて来た曲たちがとてもはっきりと解りやすい形でこちら側に届いて来る。宮本の歌の伝わり方は、ライブハウスである事も相まって説得力はこの上ないものになっていた。
「未来の生命体」では早くも宮本が石くんの帽子を取り上げ、自分が被りながら歌い始める。3曲目で早くも石くんの赤毛のアンがご開帳となったわけだ(笑)
TEKUMAKUMAYAKONや星の砂では石くん、ミッキー、(多分)成ちゃんのコーラスが野太く乱暴に響く。TEKUMAKUMAYAKONではトミのドラムの炸裂加減がカッコ良くて震える。
そして私の好きな曲の1つ愛すべき今日。
闘いの神よ 人よ 高くあれぶざまな日々に キッスを大空の下 大地の上少し大げさに 空気でも吸い込んで見上げれば 輝ける明日が見える
私はこの歌詞になるといつも泣けて来る。
みっともないくらいカッコ悪い自分の日常も、あぁ、それは許されてもいいんだと思えるから。これほど優しく寄り添う歌を私は知らない。
そして特筆すべきやはやはりおかみさん。
曲タイトルに相反してメチャクチャカッコイイロックチューン。
何ともエレカシらしい曲の代表だろう。元々がZEPPELINテイストを感じさせるけれども石くんのBOWING奏法は実に見事。Nambaだったか石くんのBOWINGを宮本が31点と言っていたらしいが原曲のキーボード部分を長めにアレンジしなおした間奏は幻想的でプログレの領域に達していた。
BOWINGの後の石くん&ミッキーのギターワークも秀逸。
宮本の声の調子は高音域を歌う曲ではっきりわかるけれども、i am hungryもRAINBOWも見事に高音域を凌駕していた。
第Ⅱ部1曲目、笑顔の未来への宮本の弾くイントロがちょっと危うかったなぁ。
そしてまさかの3曲目、宮本が後ろを向いて何やら。。。むむ。。。もしかしたら
予定にない曲をやるのか?・・・
っと思ったら、なななななななーーーーーーーんと!!!
月夜の散歩!!
スペアで持っていたヤイリのアコギを抱えた宮本が、
「君と歩く月の夜に~~~♪」と歌い出す。この曲の歌詞「夜はふけてゆく 俺たち置いて」なんだよね。これって思いっきりのラブソングじゃない。宮本の作るバラードはどこかに孤独感がいつも漂っている。私はそういうところが堪らなく好きで。
嗚咽しそうなほどの感動。ライブで聴けるなんて・・・もう・・・
そして俺たちの明日。初めから声が震えていた。宮本が泣いていた。
私もこの曲の歌詞と自分を重ねた。きっと宮本も自分を振り返っていたのだろう。
この力強い男が時々見せるこの感情の綻びが人間らしくて好きだ。そして不器用で
どこか破綻しかけた人間の一生懸命ゆえの涙はかくも美しいものか。
アンコール。黒いシャツに着替えた宮本。Zeppの屋根が取り払われたかのように
響く大地のシンフォニー、そしてやさしさ。ブルージーなこの曲。優しい宮本の歌う声。そしてZepp Nagoya2日目以来の今宵の月のように。この曲は本当に重い。
色んな意味でエポックメイキング的な位置にある曲だけれども、これを聴いている私もまたくだらねぇとつぶやいてしけた面して歩いている一人で、でもいくつもの色んな景色を巡り、通り過ぎて今、流した涙も苦しい思いも全てきっと報われる時が来るんじゃないか。。。なんていう希望を抱かせてくれる。
前にも書いたかもしれないが、生きる事は絶対的に嬉しい事よりも苦しい事の方が多い。それでも人間は生きていく。90%苦しくても10%の喜びがあればなんとか生きて行ける様にできている。苦しむ事って本当は嫌な事だけれど、でも苦しみは人を成長させてくれることも間違いない。人は幸せになるために生きていると思う。
幸せっていうのは人それぞれ違うだろう。でも夜が暗いから太陽のありがたさがわかるように、苦しみがあるから普通に生きていられる事、日常が素晴らしい事に気づく。エレカシの曲は無責任な希望は歌わない。かと言って破滅的なバンドでもない。
今目の前にある日常を、生活を、迷い、悩み、苦しみ、嘆き、叫び、罵倒し、泣き、笑いながら生きていく。
その日常の中にこそ幸せがあるんじゃないかと思わせてくれる。だから私は負けない。歩いていくよ。何があっても。
ファイナルのエレファントカシマシは最高にカッコよくロックンロールを響かせた。泣く子も黙る最強の音を鳴らせるバンドだと思う。あの日Zepp Sapporoはまさに奇跡の一夜だった。
*記憶違いなどあるかもしれませんがご容赦下さい。